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マルクアルト特許(MQT特許)についてよくある質問集。

カテゴリー: レーザー溶着基本全般/LTW, 最新情報/特許情報

投稿日/2010/06/15 09:31 投稿者:Mr.Marketing researcher

社内でレーザー溶着業務に携わっていますと、“マルクアルト特許”(以下、「MQT特許」と記す。)という言葉をよく耳にします。例えば、

Q1.「MQT特許は世界のどの国で成立していますか?」

Q2.「MQT特許の存続期間はいつまでですか?」

Q3.「日本国内について特許は成立しましたか?」などたくさんの質問があります。

まず、MQT特許とは何なのかを簡単にご説明致しますと、自動車用スイッチセンサーを主体に取り扱うドイツ国のMARQUARDT GMBH(マルクアルト社)が

国際出願番号:PCT/DE95/00394

出願日:1995年3月23日

に特許出願されたものを指します。

内容は、2つのワークピース(プラスチック)を準備し、1つはレーザー光透過性樹脂部材、1つはレーザー光吸収性樹脂部材とし、2つのワークピースを重ね合わせ、レーザー光透過性樹脂部材側よりレーザー光を照射し、2つのワークピース部同士を溶着する技術です。また、2つのワークピースは実質上、視覚による識別が困難(見た目同一)であることが開示されており、黒色同士のレーザー溶着技術(LTW法)の基本特許と言われています。

ここで上記の3つの質問についてご回答致します。

 <Ans1.特許成立状況>

先程も述べたようにMQT特許は世界各国で特許権を得るために国際出願(PCT出願)をしております。

国際出願番号:PCT/DE95/00394

出願日:1995年3月23日

特許成立国を調査致しますと下記のアメリカとヨーロッパ各国になります。

アメリカ US5893959

ヨーロッパ各国EP 0751865 B2(スイス、スペイン、イタリア、オランダ、ドイツ、イギリス、フランス、ベルギー国で権利化されております。)

<Ans2.特許存続期間>

ヨーロッパ各国については、(国際)出願日から20年の2015年3月23日になりますが、

アメリカについては、2016年4月13日となります。(これは、法律上の問題で、国際出願日から20年は適用されず、登録日から17年が適用され、計算しますと、2016年4月13日となります。)

<Ans3.日本国内のMQT特許>

日本国内の特許については

出願番号:出願平7-525339号(出願日:1995年3月23日)

がありますが、日本国特許庁より、実施不明瞭の理由より拒絶査定で権利化されませんでした。

しかし、分割出願(特願2006-131580号)により、特許請求の範囲を電気スイッチのハウジング部用途に限定したり、2つのワークピース部の顔料濃度を調整することを要件に入れ、現在も特許庁と争っている経過であります。

 最後まで、お読み頂きありがとうございます。ご不明点/ご質問がありましたら、コメント返信下さい。

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コメント一覧

投稿日/2010/06/15 10:18 投稿者:IsodaOCI

MQT特許に関しては、顧客に説明する場面も多く、このようにまとめて頂けるとプロモーション活動に非常に有用です。ありがとうございます。
ところで、特許成立状況について質問ですが、上記成立国以外の地域の出願状況は如何でしょうか?特に、中国、韓国、台湾、ベトナム等、アジア圏の状況が気になります。
中国は、出願なしと聞いた気がするのですが、他の地域も含めてアジア圏の状況を教えて頂けるとありがたいです。
また、EUとUSAで成立している特許で請求項の内容が少し違う(EUは電気スイッチのハウジング部品が前提、USAは電気スイッチに限らず、ワークピースという広範囲の部品)ような気がするのですが、如何でしょうか?

投稿日/2010/06/16 17:42 投稿者:Mr.Marketing researcher

コメント頂き、ありがとうございます。ご回答致します。

Q1.>・・・上記成立国以外の地域の出願状況は如何でしょうか?特に、中国、韓国、台湾、ベトナム等、アジア圏・・・・他のアジア圏の状況を教えて頂けるとありがたいです。

Ans)
MQTパテントの出願している国は、アメリカ、ヨーロッパ諸国、日本にしか出願されていません。
つまり、日本以外はアジア圏には一切出願されていません。

Q2.>EUとUSAで成立している特許で請求項の内容が少し違う(EUは電気スイッチのハウジング部品が前提、USAは電気スイッチに限らず、ワークピースという広範囲の部品)ような気がするのですが、如何でしょうか?

ANS)(ここからは私見です。)
・USパテントでは請求項中に “article of manufacture”の表現しかなく、電気スイッチに限らず、広範囲の権利範囲と言っていいでしょう。
・次にEUパテントでは請求項中に“in particular a casing for an electricswitch”の表現があり、電気スイッチのハウジング部分に限定されるのかを考えてみます。
・請求項中の“in particular”(日本語で「特に」、「とりわけ」)の表現があり、電気スイッチのハウジング部分だけなのか、それ以外も含むのか曖昧表現となっています。
・曖昧表現なので、明細書中の本文を読んでみると、EP特許の[0047]に以下のような表現があります。(日本語訳の特表平09-510930も参照する)
「・・・本発明は電気スイッチの製造に使用されるだけでなく、例えば家庭用品、包装等のためのプラスチックからなるいかなる所望のワークピース、ハウジング等にも使用可能である。」
・つまり、USパテント≒EUパテント(両パテント共に、電気スイッチに限らず、広範囲の権利範囲となります。)
・しかし、EUパテントの全体的内容は電気スイッチのハウジングをポイントとして記載されており、もし、裁判で争ったときには“a casing for an electricswitch”の権利範囲しかないように思います。
<まとめ>
USパテント(電気スイッチに限らず、広範囲の権利範囲となります。)
EUパテント(電気スイッチに限らず、広範囲の権利範囲ではあるが、もし、裁判で争ったときには“a casing for an electricswitch”の権利範囲しかないように思う。)

以上です。

また、ご不明点がありましたらコメントを投稿下さい。

投稿日/2010/09/16 13:56 投稿者:Mr.Marketing researcher

~国内のMQT特許分割出願の審査経過について~分割出願(特願2006-131580号)

日本の特許庁は、MQT特許親出願に続いて、分割出願分についても拒絶査定を言い渡しました。

争うには4ヶ月以内に審判請求するしかありません。
MQT側がどのよう対応をとるのか、進捗がありましたら本掲示板でご連絡致します。

ご不明点/ご質問がありましたら、コメント返信下さい。

投稿日/2011/02/21 10:00 投稿者:Mr.Marketing researcher

~国内のMQT特許分割出願の審査経過について~分割出願(特願2006-131580号)
MQT側は特許庁に審判請求をして、まだ争う姿勢を示しています。
現在のクレームは色材を「顔料」に限定して、
・LTW、LAW共に同一の顔料を用いて、
・LTW側は顔料濃度を薄く、LAW側は顔料濃度を濃くして、
・見た目同一の色調にみせる
というようなクレームで争っています。
親出願同様に拒絶になる可能性が高いと思いますが・・・続きはまたこの掲示板にて報告します。

投稿日/2012/08/13 12:04 投稿者:Mr.Marketing researcher

国内のマルクアルト特許分割出願(以下、MQT特許(JP4979263))について、
審判請求中までお伝えしましたが、
特許性が認められ、特許公報が発行されました。
MQT特許が最終的にどのような権利範囲で特許性が認められたかを以下に解説致します。

特許性が認められたキーポイントは、MQT社側が審判請求時に提出した

出願時に行ったレーザー溶着技術の実験レポートにあると思っております。
ここでの実験レポート内容は、
樹脂としてナイロン66を使用し、
透過性部材⇒カーボンブラックを0.2~0.4重量%配合、
吸収性部材⇒カーボンブラックを0.8~1.0重量%配合し、
両部材を重ね合わせて、透過性部材側より、
近赤外920nmのレーザー光を照射し、両部材を溶着する内容です。
また、応用用途部材として自動車(メルセデスやアウディ等)用キーレスエントリーに使用されていた
ことを開示しております。

以上、特許公報と実験レポートを考慮してMQT特許の最終的な権利範囲について検証してみます。

簡略に説明致しますと、以下の内容となります。
重ね合わせ(オーバーラップ)のレーザー溶着技術の内容で、
・着色剤として顔料に限定。
・透過性部材、吸収性部材共に同一の顔料を用いて着色。
・透過性部材側は顔料濃度を薄くして、吸収性部材側は顔料濃度を濃くする。(ここで、両部材共に同一の顔料を用いる。)
・見た目同一の色調にみせる
という内容となります。

オリヱント化学工業社は、透過性・吸収性部材用着色剤として、

「eBIND LTW-series」「eBIND LAW-series」を製造販売しておりますが、
両部材に同一の顔料を用いることや、同一の顔料を用いて濃度調整を行う思想はありません。
従って、透過性・吸収性部材用着色剤
「eBIND LTW-series」「eBIND LAW-series」はMQT特許には抵触しないと考えております。

最後まで、お読み頂きありがとうございます。ご不明点/ご質問がありましたらコメント返信下さい。